鼻づまりの原因の治し方

鼻づまりが治ることで、「集中力や持続力が上がった」「風邪をひきにくくなった」という声をよく聞きます。これは、鼻呼吸に頭蓋底(脳の底)を冷却する働きがあるためです。鼻呼吸ができず頭蓋底を冷やせなくなると、「いつも頭がボーッとする」「集中力が続かない」といった症状が現れるほか、イビキがひどくなったり、睡眠が浅くなったりします。

鼻づまりの症状

鼻づまりの症状鼻がつまっていると自然と口呼吸になりますが、すぐに喉が乾いてしまいます。これは、通常の鼻呼吸が、吸気を加湿・加温し、喉や気管や肺を乾燥から守っているためです。鼻がつまると喉や気管を痛めやすいため、風邪を引いたり、また風邪の治りも遅くなってしまいます。

鼻づまりの原因

鼻づまりの原因複数の原因が混在している場合がほとんどですが、最も多いのがアレルギー性鼻炎です。世代によって特徴的に多いものでいえば、乳児期のアデノイド、大人の肥厚性鼻炎や鼻中隔弯曲症、副鼻腔炎などがあります。

鼻の粘膜のはれ

鼻炎・副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、肥厚性鼻炎、妊娠性鼻炎などの方は、炎症やアレルギーで鼻の中の粘膜がはれている状態です。点鼻薬の常用ではれる場合もあります。

鼻漏(鼻じる)

鼻炎・副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎の方は、鼻漏(鼻じる)がたまることがあります。鼻漏(鼻じる)がたまると、空気の通り道が狭まります。たいていは粘膜のはれを伴います。

鼻茸

鼻茸が、副鼻腔から空気の通り道である鼻腔に飛び出して、鼻づまりが起こります。鼻茸は腫瘍ではありませんが、治療は摘出手術になります。片方の鼻だけに鼻茸が存在する場合は、良性腫瘍の乳頭腫の恐れがあるので、より注意が必要です。

鼻腔への異物混入

ティッシュの切れ端、米粒など異物が鼻腔内に残っていることで、鼻づまりを起こしていることがあります。鼻腔内の異物をそのままにしておくと炎症を起こし、強い鼻づまりや鼻汁の症状が現れます。特に、乳幼児はご両親が気づかない間に、鼻の中にごく小さな玩具や食べ物などを詰めていることが少なくありません。

鼻咽腔のはれ

のどの周りには、のどちんこの両側にある口蓋扁桃、のどの一番上(鼻の奥)にある咽頭扁桃、舌の付け根にある舌扁桃などがあります。アデノイドとも呼ばれる咽頭扁桃が原因になることもあります。アデノイドは3歳~6歳頃に現れ、その後、だんだん小さくなっていくと言われています。まれですが、大人の場合、鼻咽腔にがんが認められる場合もあります。

軟骨や骨のゆがみ

鼻中隔弯曲症の方や、鼻中隔の外側にある下鼻甲介が分厚い方は、気道(空気の通り道)が極端に狭くなっています。アレルギー性鼻炎、肥厚性鼻炎の方にも認められることがあります。

鼻づまりの症状

下記はあくまでも目安です。適切な治療を受けるには、早期発見と正確な判断が欠かせません。耳鼻咽喉科での診察や検査をおすすめします。当クリニックでは、視診のほか、必要に応じてのレントゲン検査、CT検査、血液検査、ファイバースコープや電子スコープによる検査を行っています。

症状 疑われる病気
青っ鼻が出る 副鼻腔炎
鼻汁が喉の方へ行く 副鼻腔炎
咳やタンが頻繁に出る 副鼻腔炎
鼻が片方だけつまっている 鼻中隔弯曲症・片方だけに鼻茸ができている
左右の鼻が交互に鼻づまりを起こす 鼻中隔弯曲症、アレルギー性鼻炎
鼻血を伴う鼻づまり アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎のほか、鼻内腫瘍

鼻づまりの治療

抗生物質などの薬を副鼻腔に送りこむネブライザー、鼻汁の吸引や薬の噴霧による鼻と副鼻腔入口部の処置、内服薬や点鼻薬の処方を組み合わせた外来による通院が基本です。効果が見られない場合は手術を検討しますが、最初から手術以外では改善が見込めないケースもあります。再発を繰り返す場合など、根本治療をご希望の場合、手術をすすめることもあります。

アレルギー性鼻炎による肥厚性鼻炎

内服

近年、鼻づまりに効果的な薬が登場しています。アレルギー治療薬の抗ロイコトリエン薬、抗トロンボキサンA2薬といった薬を、一定期間以上(数週間以上)飲むことで、かなりの改善が期待できます。

点鼻

ステロイド点鼻液を使用します。ステロイド剤には抵抗を感じる方が少なくありませんが、副作用の心配はほとんどありません。ただし血管収縮剤の点鼻液は常用することで鼻づまりが悪化してしまうため、注意が必要です(薬剤性鼻炎)。

吸引とネブライザー治療

鼻汁を吸引して鼻の中を清掃し、ネブライザー(噴霧器)で鼻腔のすみずみにまでステロイドや抗ヒスタミン剤を行き渡らせます。ネブライザーは耳鼻咽喉科用治療機器ですので、点鼻薬より高い効果が得られます。ただし治療自体には、通院が必要です。

手術

鼻腔粘膜焼灼術、神経過敏を抑える後鼻神経凍結手術、粘膜の奥にある骨を削る粘膜下下鼻甲介骨切除術などです。通院治療はアレルギーを根本的に治すことはできませんが、外科的手術であれば、根本からの完治が可能です。長期の通院治療よりも、結果的に治療にかかる時間や費用が抑えられる場合もあります。

副鼻腔炎による肥厚性鼻炎

内服

粘膜が一時的にはれている場合、抗炎症剤を内服します。

点鼻

一時的に鼻づまりを解消する場合は、ステロイドの点鼻液が有用です。

吸引とネブライザー治療

鼻汁を吸引して鼻の中を清掃し、ネブライザー(噴霧器)で鼻腔のすみずみにまでステロイドや抗ヒスタミン剤を行き渡らせます。ネブライザーは耳鼻咽喉科用治療機器ですので、点鼻薬より高い効果が得られます。しかし副鼻腔炎による肥厚性鼻炎の鼻づまりの場合は、効果にはかなり個人差があります。ただし治療自体に、通院が必要です。

手術

内服や点鼻、処置、ネプライザー治療で効果が得られない場合、手術を検討することになります。副鼻腔炎の炎症がある場合は鼻内副鼻腔手術を行います。ほか、症状・必要性に応じて鼻粘膜焼灼や粘膜下鼻甲介骨切除を行います。

鼻中隔弯曲症

手術治療しかありません。手術を希望しない場合や、症状が軽い場合は、服薬・投薬での対症療法を行います。しかし、対症療法は一時的な効果しか見込めず、長期間の服薬・投薬で、症状が悪化することも珍しくありません。そのため、定期的な専門医による診察と推移観察が必要になります。当クリニックでは、弯曲の程度にもよりますが、手術による治療をおすすめしています。

副鼻腔炎による鼻茸

内服

マクロライド系抗生物質、抗炎症剤など副鼻腔炎の内服薬を1~3カ月程度服用します。ただし効果は個人差が大きく、人によってはほとんど効果が現れない場合もあります。

吸引とネブライザーによる治療

鼻汁を吸引して鼻の中を清掃し、ネブライザー(噴霧器)で鼻腔のすみずみにまでステロイドや抗ヒスタミン剤を行き渡らせます。ネブライザーは耳鼻咽喉科用治療機器ですので、点鼻薬より高い効果が得られます。鼻茸の縮小に効果がある可能性はありますが、炎症を抑えるという点から言えば、限界があります。

手術

内服や点鼻、処置、ネプライザー治療で効果が得られない場合、手術を検討します。鼻茸だけ切除する場合と、副鼻腔炎の手術と鼻茸切除を同時に行う場合があります。

アデノイド(特に幼児期)

のどの周りには、のどちんこの両側にある口蓋扁桃、のどの一番上(鼻の奥)にある咽頭扁桃、舌の付け根にある舌扁桃などがあります。アデノイドとも呼ばれる咽頭扁桃が代表的です。アデノイドは2歳~3歳くらいから徐々に大きくなり、5歳~6歳頃にピークを迎えます。その後、だんだん小さくなっていくと言われていますが、個人差が大きく、ほとんど縮小しない場合もあります。アデノイドの縮小が見られず鼻づまりがひどい場合や中耳への悪影響がある場合、さらに睡眠時無呼吸症候群の原因と考えられる場合などには。手術を検討します。

点鼻液の常用(薬剤性鼻炎)

血管収縮剤の点鼻液は速効性があり、鼻づまりに高い効果を発揮します。しかし、常用すると逆に鼻粘膜が肥厚し、ひどい鼻づまりを起こしてしまいます。点鼻液の使用を止めることが大切ですが、鼻粘膜の肥厚が重度の場合は、肥厚性鼻炎手術を検討する必要があります。

妊娠性鼻炎

妊娠中は身体を巡る血液量が増えます。鼻の粘膜には多くの毛細血管が通っているため、血液量増加によって毛細血管が拡がり、はれが認められるようになります。血液量が特に増える妊娠後期や、花粉症を伴う場合、はれが深刻になってつらい症状を引き起こすこともあります。治療は点鼻薬や処置が中心となるため、効果はあまり期待できませんが、出産後は血液量が通常に戻るため、急速に回復します。

鼻内異物混入

乳幼児が自分で鼻内に小さな玩具やごく小さな食べ物、ティッシュなどを詰めてしまうことはよくあります。周囲の大人が気付けない場合も多く、それが元で炎症を起こすことも少なくありません。

乳頭腫、血管腫などの良性腫瘍

腫瘍は自然になくなることはないので、摘出手術が必要です。

若年性鼻咽腔血管線維腫

まれに起こる病気ですが、10代男性に多く見られます。頑固な鼻血の原因となっていることもあり、高度医療機関での入院治療が必要です。

悪性腫瘍

まれではありますが、鼻や副鼻腔にガンができて、それが鼻づまりや鼻血を引き起こしていることがあります。高度医療機関での入院治療が必要です。